どうにもこうにも~出会い編~
「このままじゃ寝られませんよ」

と俺は彼女の耳元で囁くと、一瞬身体を強張らせた。

「離してくれるかな?」

「んっ」

「どうしてもだめかい?」

「…西島さんと、一緒がいい」

 おいおいそんな言い方するか。どうしてこの子はこんな無防備な状態でそういうことを言ってくるのか。無意識で言ってくるところが余計ににくい。

結局5分くらいそのままにしていると、深い眠りが訪れたのか、彼女の両腕はするりとほどけた。彼女の身体に毛布をかけて、俺は寝室を出た。

彼女には悪いが俺はシャワーを浴びて、リビングのソファに寝ることにした。天井を見上げながら、今ある状況になんだかおかしくなって鼻で笑った。



 俺はそんなことを思い出しながら昨夜の出来事を簡単にまとめて話した。彼女は「え!?」とか「うそ!?」とか逐一驚きの声を上げながら俺の話を聞いていた。

「…というわけだったんですが。大丈夫ですか?」

「はあ、まあ…」

 彼女はだいぶショックを受けたようで、先細る声でそう答えた。

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