どうにもこうにも~出会い編~
腕時計をつけながら文字盤を見ると、既に11時20分を過ぎていた。間に合いそうにない。

バッグからスマホを取り出し、西島さんの番号に電話をかけた。1コールで電話に出た。

<はい、西島です。どうしました?>

「あ、あ、あの、石原です。寝坊しちゃって、その、お、遅れます!ごめんなさい!」

 私はしどろもどろになりながら謝った。羞恥で顔が熱くなる。

<大丈夫ですよ。私はのんびり待っていますから、急がなくていいので気をつけてきてください。>

 私の焦りが伝わったのか、西島さんは優しくそう言ってくれた。電話越しなのにどんな表情をしているか思い浮かぶ。私は自転車にまたがって駅へと走らせた。

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