どうにもこうにも~出会い編~
「私も、石原さんが好きです。女性として」

 そして彼は続けた。

「だけどあなたとは、これ以上の関係にはなれない」

「え…?」

「あの居酒屋で出会ったあなたには、笑顔が素敵な子だなと好感をもっていました。時々あそこに訪れてはあなたの笑顔に癒されたものです。それだけでよかったのに、あなたと外で会ううちに、私は欲が出てしまったんです。

これは私のエゴです。

本当は、こんなところであなたといるべきじゃない。あなたの方がこれからの人生は長い。先の短い自分のために時間を費やすなんてもったいないです。私に、あなたの将来を奪う権利なんてありません。どうか私のことは忘れてください。もう、あの店にも行きませんから。今日は、楽しかったです。本当に」


 彼は悲しげに微笑んで、私の手を引いて駅までの残りの道のりを歩いた。目まぐるしい展開に私の思考はついていけず、ただとめどなく涙が流れるばかりだった。

< 79 / 104 >

この作品をシェア

pagetop