もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜
臆病者の恋
「……仕方なかったんだよ」
────そう、仕方なかった。
夕方の教室。休んだ日直の代わりにあてがわれ、教室に迎えに行くのが少し遅れると奈湖に連絡をした。
なんで、寄りによって約束のある今日なんだとモヤモヤしつつ、黙々と仕事をこなす。
そして、黒板を掃除していた俺は、同じく黙々と仕事をしていた広瀬からの質問に静かに答えた。
本当に、不本意だったんだ。
「……奈湖は、本屋で助けてくれたあの子なんだ」
「え、それすごいね」
「もっと時間を掛けて、距離をもっと詰めて、告白したかったんだけど。それをすると、他の男に持っていかれそうだったから」