もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜
一人になんて、戻れない。
「小森さん」
「は、はい」
「体調、大丈夫だった?」
「もう平気です」
広瀬先輩が頭痛薬を飲んでいる隙に、香坂先輩からの言葉で気持ちがクリアになった私は、保健室から出ようとした。
しかし、ギリギリのところで引き止められ、何故かソファーで並んで座っている。
授業開始のチャイムが鳴っても、広瀬先輩は出て行こうとしない。タイミングが良いのか悪いのか、先生も戻ってこないし。
正直気まずい。花宮先輩の元カノ同士ということもあるし、何よりほぼ話したことがない。それに、この前先輩の教室前で盗み聞きをしてしまったこともある。
私が冷や汗を流していると、広瀬先輩は口を開いた。
「ねぇ、一つ言っておくけど……私、花宮の元カノじゃないからね」
「…………え?」
「やっぱり勘違いされてた」
驚きで固まった私を見て、広瀬先輩は口角を上げる。
「そ、そうなんですか……?」
「ないない。私花宮のこと好みでも何でもないから」
「……あはは、けど、今は私も、一応元カノなので」
「…………」
「花宮先輩の優しさで、仕方なく付き合って貰ってたようなものなので」
今更知っても、私も今は先輩の過去だ。自分で別れを告げておいて、落ち込むのはお門違い。だけど視線は自然と下を向く。
そして、教室で盗み聞きした言葉を思わず口走ってしまった。
すると、隣から広瀬先輩の声が降ってきた。
「……仕方なく?」
「あっ、えっと、それは」
「ないでしょ、そんなことありえない」
「……え?」
「待って、もしかして、この前教室で私たちの話し聞いてたの……?」
「ひっ、ご、ごめんなさ」
突然両肩を掴まれ、広瀬先輩は焦ったように私を揺さぶる。
「小森さん、勘違いしてる」
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