もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜




 放課後、私は廊下を走っている。


 本当はホームルームが終わってすぐに教室を出たかったのに、担任に呼ばれて遅くなってしまった。


 厳しい学年主任の横を擦り抜け怒鳴られても、他の生徒に横目で見られても、私は脚を止めない。


 階段を駆け上がり、私はとある教室の前に辿り着くと、中を覗き込む。



「はぁっ、はぁっ……あのっ、花宮先輩はっ」
「小森さんっ」
「広瀬先輩っ……」
「花宮さっき帰っちゃったの。まだ校舎にいるかも」
「わかりました!」



 広瀬先輩は心配そうな表情で私を見送ってくれた。


 スマホで連絡をするより、自分の言葉で直接伝えたい。


 それくらいに、保健室で広瀬先輩から告げられた事は衝撃的だったし、自分に呆れてしまうようなことだった。




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