もらってください、花宮先輩。〜君の初めてが全部欲しい〜




『私の口から言うのもどうかと思うけど……花宮は仕方がなく小森さんと付き合ってたわけではないの』


『告白するタイミングとか、本当はもっと時間を掛けたかったって意味の、仕方がなかったなんだよ』


『だって、花宮は小森さんのことだけをずっと────』




 ────なんで、一番近くにいたのに。分からなかったんだろう。分かろうとしなかったんだろう。逃げ出してしまったんだろう。


 聞く前に全てを決めつけて、傷付けて、終わりにして。


 花宮先輩は、ずっと大切にしてくれていたのに。


 脚がもつれそうになりながらも、私は廊下を駆け抜け、階段を駆け下りる。



『自由になっていいって、なに? 俺がいつそんなこと望んだの?』



 ────ごめんなさい。


『俺が奈湖と付き合ってから伝えてきた言葉、そんなに薄っぺらく感じてた?』


 ────そんなことない。


『幸せにって、何? 俺の幸せは俺が決めるものだし、俺が奈湖のはじめてを貰いたいと思ったから貰っていたんだ。一緒にいたかったから……俺は』



 ────傷付けてごめんなさい。



『たくさんのはじめてをくれて、本当にありがとう。こちらこそ……本当にもらってばかりだった』



 息が上がる、苦しい。けど、追い付くまでは止まれない。



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