若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 東館の四階でエレベーターを降りると、スーツ姿の四十代くらいの眼鏡をかけた男性が待っていた。

「いらっしゃいませ。お待ち申し上げておりました」

「多田さん、いつもお世話になっております」
 
 眼鏡の男性は翠子さんに向かって丁寧に頭を下げてから、私の方へ体を向ける。

「御子柴様の外商担当の多田と申します。どうぞよろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

 丁寧にお辞儀をされて、私も頭を下げる。

「若旦那さまがお待ちになっております。ご案内いたします」

「澪緒さま、私はここで。お店に戻りますので」

「ありがとうございました。翠子さん」

「はい。お店でお待ちしています。多田さん、よろしくお願いします」

 翠子さんはやってきたエレベーターに乗り込んでいった。

 私は多田さんの案内で進み、すりガラスの自動ドアの向こうへ。

 そこは広いサロンのようになっていて、多田さんはさらに奥のスペースへと私を促すと、重厚な木のドアをノックしてから入室する。
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