若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「あ……くさいですね。ごめんなさい。ハンバーガーが食べたくて」

「いや、俺も食べたかったな」

「本当に? じゃあ、明日のお昼は?」

 食べたかったというわりには無表情の彼に、顔を近づけてにっこり聞いてみる。

「連日でいいのか?」

「ノープロブレム。全然です」

「では明日の夜に。昼は着物に匂いをつけたくない」

「あ、でもおばあさまは?」

「それもノープロブレムだ」

 そこへドアがノックされ、先ほどの女性がコーヒーを持ってきてくれた。絢斗さんにはお代わりを。

 そして移動式のハンガーラックに掛けられたたくさんの服を多田さんが運んできた。

「お待たせいたしました」

 ハンガーラックは他の店員も手伝い、五つにも及んでいる。ひとつのラックに二十着はありそうだ。

「シーン別にご用意させていただいております」

「澪緒、気に入ったのを選んで」

 たかが一着だけのためにだけにおよそ百着も持ってくるなんて……。

 あっけにとられていると、絢斗さんが立ち上がり、私に手を差し出す。

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