若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「見に行こう」

 絢斗さんの手につかまり立ち上がると、ラックの前に連れていかれる。

 どれも上質な素材のワンピースやスーツで、素敵なものばかりだ。これだけあると選べない。

「……選べないです」

「意外だな。自分で着たいものを選ぶかと思った」

「こんなにたくさんあるからいけないんです」

「じゃあ、俺が選ぼう」

 絢斗さんはシンプルな生成りのワンピースを手に取り、多田さんに渡す。

 それならおばあさまが気に入りそうだ。

 ソファに戻ろうとすると、私の腕が引っ張られた。

「これと、これ。それも」

 絢斗さんは私を引きとめ、次から次へとワンピースを手に取っていく。

 多田さんは抱えきれなくなっている。

「ええっ? 絢斗さん、一着でいいのに」

「は? 御子柴屋の若奥さまが一着だけで済むと?」

「だって……そんなに必要ですか?」

「もちろん」

 絢斗さんは私に選ばせることなく、次のラックからも数着を手にして多田さんに渡す。多田さんはアシスタントの女性にそれを手渡す流れ作業だ。
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