若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 翌朝、昨晩のキスにどんな顔をすればいいのか困惑していたけれど、朝食の席にはおばあさまもいるので、いつも通りにしなければと気を引きしめる。

 今日は定休日なので翠子さんはいない。

「澪緒さん、十時から華道の練習ですからね。お着物に着替えて和室にいらっしゃい」

「はい」

 おばあさまの言葉を待っていた私は、慌てることなく落ち着いて返事ができた。

 だけど――。

「澪緒」

 ふいに絢斗さんが私を呼び、ビクッと肩を跳ねさせてしまった。

「は、はい」

 昨晩のキスからドキドキが止まらないでいる。

「しっかりおばあさまから学んでくれ。おばあさま、澪緒をよろしくお願いします」

 彼は私が意識しているのがわかっているのか、こちらへ向ける目が楽しんでいるように見える。

 私が絢斗さんにドキドキしている理由は他にもある。今日の彼は濃紺のスーツ姿で、ジャケットの下にベストまで着ているのだ。めちゃくちゃクールだ。
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