若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「では行ってきます」

 絢斗さんは朝食の席を立った。

「澪緒さん、門までお見送りをしなさい」

「はい」

 おばあさまに言われて、私は絢斗さんのあとを追い、玄関で追いついた。

 彼は江古田さんから長い靴べらを受け取り、ピカピカに磨かれた革靴に足を入れると、敷居をまたいだ。

 私はサンダルをつっかけて、絢斗さんのうしろを歩く。

 うしろ姿までかっこいいんですけど……。

 こんなに男性を意識したことなんて今までなかったな。

 門の手前で絢斗さんは立ち止まり振り返る。

「元気がないように見えるが?」

「そ、そんなことないわ」

 首を左右に振って笑う。

「澪緒、行ってくる」

「行ってらっしゃい、ませ」

 見送りの挨拶は『行ってらっしゃい』じゃなく『行ってらっしゃいませ』と言うようにとおばあさまに注意されるけれど、なかなか自然と口にできない。

 彼は口元を緩ませ、私の顎に手を置いた。

 え……?

 次の瞬間、唇が塞がれていた。そして私の唇を食んだあと離れる。


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