若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「……わからないわ」

《わからない? そっちではどんな話をしているんだ? うちとの業務提携の話は?》

 私のシラケた態度が父に伝わっていないのだろう。さらに仕事の話を持ち出されて、気持ちが萎える。

「日本の作法とか知らないからおばあさまに気に入られていないし、頑張る気もないの」

 気に入られていないことは本当。でも、やる気はたっぷりある。父に牽制してそう言ったのだ。

《では私が挨拶に伺おう》

 挨拶に来る?

 私は見えない相手に首を左右に振る。

 予想もしなかった父の言葉だった。ううん、いつかは御子柴屋の店舗にやってくると思っていたから、おばあさまに気に入られていないし、頑張る気もないとわざわざ言ったのだ。そう言えば、少し様子を見るのではないかと思って。

「パパ、今は覚えることがたくさんで忙しいの。おばあさまも絢斗さんも。もう少しあとにして」

《そうか? じゃあ、今は我慢することにしよう》

 我慢って……。

 苛立ちがこみ上げてきて、なにも言わずに通話を切りたい思いに駆られたが、空気を読まないで店舗に来られても困るので我慢した。

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