若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「そうしてね。じゃあ」

《ああ。頑張ってくれ》

 父の方から通話を終え、ホッと安堵しながらスマホを枕元に置いた。

 近いうちに父と話をしなければならないだろう。けれど、今顔を合わせたらひどいことを言ってしまいそうだから、できれば気持ちが落ち着いてからにしたい。


 翌朝、いつも通り朝食の席に着くと、絢斗さんの席にはなにも置かれていなかった。

 昨晩、彼の帰宅を待っていたが、いつの間にか寝てしまっていた。

 おばあさまと翠子さんが着座して、私は口を開く。

「おばあさま、若旦那さまは……?」

「夜に戻る予定でしたが、向こうで友人に会ったとかでお泊まりになったんですよ。先ほど京都を出たと連絡があって、十一時前には店に直接行くと言っていましたよ」

 そうだったんだ……。でも、友人って……?

 泊まるほど親しい友人が気になってくる。

「いただきましょう」

 考え事をしていた私は、翠子さんに「若奥さま?」と言われて我に返る。

「あ、はい。いただきます」

 両手を合わせてお箸を手にしたあともまだ気になっていた。

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