若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 朝食後、店舗へ赴き、掃除を終わらせて着物を身につける。今日の早番のローテーションも島谷さんと香川さんだ。

 だけど私は絢斗さんが気になって掃除にも着付けにも集中できない。ふたりとの会話にも上の空になっている。

 私、どうしちゃったの……?

 支度を終えたところへ翠子さんがやってきて、島谷さんと香川さんには先に休憩室へ行ってもらう。

「若奥さま、おつかれさまでございます」

「翠子さんもおつかれさまです。おばあさまが呼んでいますか?」

「いいえ。言付けだけです。今日は反巻きの練習を午前中に、午後は書物で着物の勉強をするようにと」

「わかりました。じゃあ、空いている商談ルームで練習しますね」

 だいぶ綺麗に巻けるようになったが、合格点をもらうにはまだまだだ。

「若奥さま、若旦那さまのお泊まりの件が気になっているのではないですか?」

「えっ?」

 驚いて目を大きく見開く。

「安心しても大丈夫だと思います。ご婚約なさっているのに、他の女性とお泊まりになる方ではありません」

「う、浮気を疑っているわけじゃ……」

 口ではそう言ったが、心の片隅では懸念していたことだ。

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