若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「顔が赤いですよ。若奥さま、可愛いです」

「翠子さんっ、からかわないでくださいっ」

「ふふっ。おふたりがいい感じで嬉しいんですよ。一昨日、ホテルのバーにいらしていましたよね」

「なんで知っているんですか?」

 翠子さんは辺りをキョロキョロと見てから、私の耳元に顔を寄せる。

「若旦那さまは日本橋から銀座界隈では顔が知られていますから、綺麗な女性と出歩いていたとすぐに耳に入ってくるんです。ここだけの話、大奥さまは若奥さまが〝綺麗な女性〟だと噂されていて嬉しそうでしたよ」

 私から離れた翠子さんはにっこり笑顔を向ける。

「本当に? おばあさまが?」

「はい。頑張ってくださいね。若奥さま」

 翠子さんはニコニコと冷やかすように言って去っていった。
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