若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「澪緒、そこの物が置いてある席に座って」

 執務デスクのパソコンから視線を私に向けた絢斗さんは、部屋の中央にある大きなテーブルを示す。

 指示通りに、本が数冊と、着物の帯のような生地で作られた細長いポーチが置かれているテーブルの前に腰を下ろした。

 絢斗さんも執務デスクを離れて私の隣に立つ。

「筆ペンの練習帳だ。これで練習をするといい」

 彼は細長いポーチから箱を取り出して一本の筆ペンを私に渡してくれる。

 その筆ペンはローズ色で、オパールのようなキラキラとした光を放っている。しかも、〝澪緒〟と名前が彫られていた。

「これは……」

「京都の土産だ」

「ありがとうございます!」

 見るからに高級そうな筆ペンをテーブルの上に置き、数冊ある練習帳から上にあった一冊を開いてみる。

「それは初級者用で〝あいうえお〟のひらがなから始まっている。それが終わったら、漢字、冠婚葬祭の挨拶文になっている」

「これで上手になるよう練習しますね。ありがとうございました」

 もう一度お礼を口にしてそれらを持って立ち上がろうとすると、抱え込んだものをテーブルの上に戻される。

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