若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「ここで練習をするんだ」
「え? 今? おばあさまから着物の勉強を……」
「そう、今だ。おばあさまには伝えた」
そう言いながら、絢斗さんは一番簡単な練習帳を開いて私の目の前に置く。
「ペンを持って」
私はローズ色の筆ペンへ手を伸ばしてキャップを開けた。
「隣の手本のように書いてみて」
「はい」
日本語を書くのは久しぶりだった。今までは書籍を読めばいいだけで、文字は書いていない。
絢斗さんに見られながら文字を綴るのはきゅっと身が引きしまる感覚だ。緊張しながら筆ペンの先を練習帳に置いた。
「えっ?」
筆ペンの先からじんわりと墨が滲んでしまい、慌てて練習帳から離す。
「筆圧が強いんだ。いいか」
ふいに絢斗さんが背後から抱きかかえるようにして、筆ペンを持った私の右手に手を重ねた。彼から香る白檀の匂いも私の嗅覚を刺激する。
その瞬間、心臓がドクンと大きく跳ねた。肩も跳ねそうになるのを必死に抑える。
大きな手のひらがふんわりと私の右手を包み込んでいる。
「え? 今? おばあさまから着物の勉強を……」
「そう、今だ。おばあさまには伝えた」
そう言いながら、絢斗さんは一番簡単な練習帳を開いて私の目の前に置く。
「ペンを持って」
私はローズ色の筆ペンへ手を伸ばしてキャップを開けた。
「隣の手本のように書いてみて」
「はい」
日本語を書くのは久しぶりだった。今までは書籍を読めばいいだけで、文字は書いていない。
絢斗さんに見られながら文字を綴るのはきゅっと身が引きしまる感覚だ。緊張しながら筆ペンの先を練習帳に置いた。
「えっ?」
筆ペンの先からじんわりと墨が滲んでしまい、慌てて練習帳から離す。
「筆圧が強いんだ。いいか」
ふいに絢斗さんが背後から抱きかかえるようにして、筆ペンを持った私の右手に手を重ねた。彼から香る白檀の匂いも私の嗅覚を刺激する。
その瞬間、心臓がドクンと大きく跳ねた。肩も跳ねそうになるのを必死に抑える。
大きな手のひらがふんわりと私の右手を包み込んでいる。