若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「西澤さまもやりますこと。あんなに綺麗なお嬢さんが愛人だなんてねぇ」

 俺は寿葉さんの言葉を上の空で聞きながら、ふたりが消えた方向へ視線を向けていた。

 なぜだか苛立ちがこみ上げてきた。

 あの女性が父親ほどの年の男と一緒にいたからなのか?

 一瞬でも心を奪われた女性が愛人だとは……。



 一週間後。祖母が念入りに準備をしたパーティーの当日だ。十一時から始まり、約三時間でお開きになる。

 このパーティーを楽しむ気持ちにはなれないが、祖母のためには致し方ない。

 俺は女性に興味がないわけではない。しかし、以前独占欲が強すぎる女性と交際していたせいで、女とはそんなものかと冷めた気持ちで相手を見てしまう。だから朝陽の妻への溺愛ぶりには驚かされている。

 いつかは結婚したいと思うが、愛せる女性が今のところ現れないのだ。

「絢斗さん、お支度は終わったかしら?」

 襖の向こうの廊下から祖母の弾むような声が聞こえた。
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