若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 二階の自室に戻って、抱えていた本を床に置く。

「ふぅ~、重かった」

 私の口から漏れるのは日本語じゃなくて、英語だ。

 本は畳の上に置いた瞬間、崩れて散らばった。それを直して部屋の端に寄せておく。

 応接室にいる間に、布団一式がたたんで置かれていた。

 ベッドじゃないのは初めてでものめずらしく、ポスンとうつぶせで倒れてみた。
 ふんわりと体を包み込むような感覚と、なんとなく懐かしい匂いに、瞼が落ちてきそうになる。

「まだ四時半だし、夕食は八時半からだって言ってたから眠っちゃおう」

 独り言ちると、スーッと眠りに引き込まれていった。


「――緒、澪緒」
 
 肩のあたりを揺さぶられて、体をビクッとさせて目を覚ます。一瞬、どこにいるのかわからなかったが、もそっと顔を上げた先に美麗な絢斗さんの顔があり、状況を把握した。

「すごい寝方だな。うたたねでも布団をかけなければ風邪を引くぞ」

 室内の電気は点けられている。

「今何時……あ! 夕食!」

 すっくと立ち上がり、柱に掛けられた時計へ顔を向ける私に、絢斗さんは呆れた顔になる。

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