若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
 それから三時間後、私は布団の中で寝返りを何度も打っていた。

 スプリングのない寝床。めちゃくちゃ固いわけでもない。しかし、慣れない部屋と布団のせいでなかなか眠れない。

 横向きで枕を抱えながら、「ふぅ~」とため息をつく。

 目線の先に、積まれた本が暗闇の中でうっすら見える。

 本でも読んだら眠くなるかしら……。

 体を起こし、枕元のライトをつけて、一番上にあった本を手に取った。それは着物の事典のようで、抱いていた枕を頭の位置に戻してうつぶせで読み始めた。

 専門用語ばかりでおもしろみもなにもない本だが、まだ眠りは訪れてくれない。

 集中できずに同じところを何度も目で追う。

 こんなことじゃ、いつになったらあの本をすべて読み終わることか……。

 絢斗さんにやるだけやってみると言ったけれど、私は本当にここで暮らしていけるのだろうか……。

 つい本よりも考える方に夢中になって、ドアをノックする音にハッとなった。ガバッと体を起こし、枕を抱きかかえてドアを見る。

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