若旦那様は愛しい政略妻を逃がさない〜本日、跡継ぎを宿すために嫁入りします〜
「若旦那さまは誰もが振り向く美男子ですが、冷たくて苦手です。あ、これは内緒で。あくまでも夫として見たら……の話です。雇い主としては仕事もできて、従業員の信頼もあって素晴らしいと思います」

 彼女は茶目っ気たっぷりに口元に指を一本立てた。

「たしかに冷たいわね。昨晩、私がベッドが欲しいって言ったら、それなら自分のベッドに来ればいいって」

「えっ? 若旦那さまがそんなことを……?」

 急に翠子さんの顔が赤く染まり、私は両手をブンブン振って口を開く。

「私が絶対に行かないとわかってて意地悪をしたの」

「まあ……意地悪を……でも、違うと思いますわ。澪緒さまが可愛いので、からかったのだと」

「からかった? からかうのならベッドの希望を叶えてほしい」

 はぁ~と疲れきったため息を漏らしたとき、タクシーは大きな病院のエントランスに到着した。

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