エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 けれども、それも一瞬のことだった。

 何故なら、窪塚の言葉にいつもの如くカチンときてしまったために、黙ってなどいられなかったからだ。

「私がいつヘラヘラしてたっていうのよ?! 意味わかんないッ! もう放してッ!」

 窪塚の腕からなんとかして抜け出してやろうと、身体を捩って背後の窪塚の身体を両手で無意気に押しやっているうち窪塚に手首を掴まれたために、正面から窪塚と対峙する格好となってしまい。

 長身の窪塚の顔を見上げた刹那、先程の声音同様の、なんともいえない切なげな表情を湛えた窪塚と視線がかち合い、たちまち心臓がギュッと鷲づかみでもされたかのような心地に囚われる。

 ーーな、何よ? 何、泣きそうな顔なんかしてんのよ? 調子が狂うでしょうが。

 胸の内では、そんな風に悪態をついちゃいるが、鼓動が尋常じゃないスピードで暴れまくっているお陰で、やかましくて、ちっとも落ち着かないどころか、もはやパニック同然だ。
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