エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
それは窪塚本人からも聞いてて知っているはずなのに、それなのに……。
いざ、その頃の窪塚のことをよく知る人から聞いてしまうと、想像に過ぎなかったのに、一気に現実味を帯びてくる。
傍から見てわかるくらい落ち込んでたんだ。そんなにも好きだったんだ。
そりゃそうか。付き合いの長い幼馴染なんだもんね。
だから、私のことを幼馴染みの身代わりにして、なんとか忘れようとしてるんだーー。
窪塚にとったら、あんな酷い仕打ちをした私と、あの夜たまたま関係を持って、思いがけず身体の相性が頗る良かったために、画像で脅して利用してやろうと考えたに過ぎないのだろう。
あんな酷い仕打ちをしたんだもん。そう思われても仕方ないのかもしれない。
さっきだって、幼馴染みの身代わりにしている私が自分以外の異性と一緒にいたのを目の当たりにしてしまって、失恋した時の感情が呼び起こされてしまっただけだったに違いない。
そう思ったら、何故だろう。胸が締め付けられる心地がして、痛くて痛くて仕方なかった。
「あっ、戻ってきた。今の圭には内緒ね。余計なお節介だって怒るから」
「……あっ、あぁ、はい」
「なんだよ、ふたりしてコソコソと。俺がいない間に悪口でも言ってたのか?」
「なんだよ圭こそ、彼女に話されちゃマズイことでもあるのか?」
「別に」
「心配しなくても、営業してただけだから安心しろ」
窪塚とかずさんが仲のいい兄弟喧嘩のようなやりとりを繰り広げている様子をぼんやりと眺めつつ、これまで幾度となく浮上していた妙な仮説がようやく勘違いだと分かってスッキリしたはずが。
代わりに浮上してきてしまったこの不可解な感情が一体なんなのかよく分からず、心がモヤモヤとして晴れることはなかった。