エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
「これで偽装工作もバッチリだし、そろそろ帰るか」
「……あっ、あぁ、うん」
「なんだよ、ムスッとして。せっかくの初デートなのにテンションが下がるだろうが」
「た、ただの偽装工作だしッ」
「そんなに怒ると可愛い顔が台無しだぞ。せっかく本城に綺麗にメイクしてもらってんのに」
「大きなお世話だしッ!」
「あーあー、怒りジワできてんじゃん。お前って見た目はメチャクチャ可愛いのに、ほんと残念な女だよなぁ」
「わ、悪かったわねぇ!」
「ハハッ、そんなに怒ってたらまた躓くぞ、ほら」
「手なんてつながなくても平気だし」
「まだデート中だからに決まってんだろ、バーカ」
「あっ、ちょっと。もー!」
泣くのを必死で堪えていたせいで、どうやら窪塚の目には、怒ったような表情に映ってしまったようだ。
けれども、なんとか泣くのを回避できたし、表面上は平静を装うこともできていると思う。
そんな有様だったために、いつもと変わらない調子で窪塚とあれこれ言い合っていたのだけれど、内心はちっとも穏やかじゃなかった。
これまで二十六年間生きてきたなかで、こういった経験が一度もなかったものの、この感情が何であるかの大凡の見当がついてしまったせいだ。
けれど、窪塚にとって、未だ忘れることのできない幼馴染みの身代わりでしかない私にとって、この感情を抱くということは、実に不毛で虚しいことでしかない。
当然のことながら、それを承知の上で素直に認められるはずがない。
私はいつしか窪塚に対して抱いてしまっていたらしいこの感情に全力で気づかないフリをして、これまでと同じように振る舞うのにただただ必死だった。