エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
そんな私の頭上から、窪塚が零した笑みと、僅かに揶揄いを含んだ声音が降り注いだ。
「もうなんども抱き合ってるってのに、そんなに緊張するなよ。こっちまで緊張するだろ」
ーーこっちはこんなにも緊張しまくって余裕なんか微塵もないっていうのに。いい気なもんだ!
言葉の割には余裕そうな窪塚の声にムッとして睨みつけようとカッと目を見開いたその先には、思いの外優しい表情を湛えている窪塚の端正な顔が待ち受けていたために、思わず息を呑み見蕩れてしまっていて。それを。
「どうした? ポーッとして。もしかして俺に見蕩れてんの?」
すかさず、窪塚に実に愉しそうに指摘されてしまい。
「バッカじゃないのッ! 誰がアンタなんかに見蕩れるもんですかッ! こういうことに不慣れな私と違ってアンタがあんまり余裕そうだから、さぞかしこういうことに慣れてるんだろうなって感心してただけだしッ」
いつもの如く売り言葉に買い言葉で応戦したまではよかったのだが。
「バーカ、俺だって緊張ぐらいするっての。今だってそうだし、オペの前だと食いもんが喉通んねーくらいだし。オペの後は逆に神経が昂ってどうしよーもねーしな」
窪塚からこれまた予想に反した言葉が返ってきたものだから、私は窪塚のことを瞠目することしかできないでいる。
確かに、オペの後は気持ちが昂ぶるとかっていうのは窪塚本人に聞いてはいたが、それ以外は初耳だったからだ。