エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
なんでも完璧にこなしてしまう窪塚には、緊張や不安なんてモノは無縁だと思っていたから、意外でしかなかった。
でも、確かに、言われてみれば、人間誰しもそういう感情を持ち合わせているのは普通だろう。
窪塚のことを長年無意識に意識してしまってた私は、窪塚を好きにならないように、特殊な人間だと思い込もうとしていたのかもしれない。
その証拠に……。
窪塚のことを瞠目したまま思案している私の元に、窪塚の捨て台詞が投下され。
「ったく。お前、俺のことをなんだと思ってんだよッ」
ハッとし意識を向けた先の窪塚の表情と口調とが、これまた拗ねた子供のようだったものだったために、胸をキュンとときめかせてしまった私は、釘付け状態だ。
そこへ再び窪塚から心外だとばかりに不服そうな声音が届くも。
「おい、なんだよ。その疑いの眼差しは」
それらすべてが窪塚のレアな表情ばかりだったために、ポカンとしたままリアクションをとることさえもできずにいた。けれど。
「そんなに信用できないなら確かめてみろよ、ほらッ」
ムッとした口調でそう言ってきた窪塚に唐突に手首を掴まれてしまったことで、驚いた私が咄嗟に「……へ?」と、頓狂な声を放ったときには、もう既に私の手は窪塚の程よく筋肉のついた逞しい胸板へとあてがわれていて。
そこから素肌を通して、窪塚の心音がトクントクンと心地よく伝わってくる。
それらがもう片方の自分の胸の上に置いた手から伝わってくる速いリズムを奏でている鼓動の音色と、あたかも共鳴でもしあっているかのようにピタリとシンクロしてしまったことで、窪塚も私同様に緊張していることが窺える。