エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 ところがそれがかえって裏目に出てしまうことになるのだった。

「わぁ、奇遇ですねぇ。僕もセミナーに参加するんで、ご一緒してもいいですか? 勿論、車もお出ししますので」
「……え? いや、用事もあるし、ひとりで行くから」

 羽田を追い払うのにセミナーのことを口にしてしまったがために、思わぬ誤算が生じてしまったのだ。

 羽田からの思いがけない申し出に面食らいつつも、即刻で突っぱねたのだが、それを好機とばかりに、あざとい羽田が特技の強引さを遺憾なく発揮してくるのだった。

「あっ、もしかして、窪塚先生と一緒に行かれるんですか?」
「////ーーえ、いや、別にそういうわけじゃ……」

 ーーないんだけど。

 でも、セミナーの後はもしかしたら窪塚と一緒に過ごすことになるかもしれないし。

 というか、そうなればいいなっていう、私の願望でしかないから、ハッキリと言い切れないところが辛いとこなんだけれど。

 どうやら、それがまずかったようだ。

「それじゃあ、問題ないですよね? 僕だけじゃなくて他の研修医も一緒なので、ご心配には及びませんから。だからいいでしょう? ねえ、鈴先生ぇ」

 羽田からの誘いを自ら断り辛い状況に追い込んでしまうこととなってしまった。

 私が『しまった』と思ったときには、時既に遅しで、羽田がお得意の可愛いワンコを彷彿とさせる潤みを帯びた円な瞳で縋るようにして、上目遣いで見つめてきて、甘えた口調で畳みかけてくる。
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