エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
折角、おしゃれもメイクも頑張ったっていうのに。そのなにもかもが全部無駄になってしまう。
そんなことよりなにより、一目でいいから窪塚に会いたいーーただそれだけだったのに。
ーーはてさて、どうしたものか。
そうやって羽田の車の前で、色々考えあぐねていた私に、羽田が耳を疑うようなことを言ってのけた。
「実は僕、鈴先生のことが好きなんです。でも、鈴先生には窪塚先生っていう彼氏がいて、諦めなきゃって思ってたんですけど、どうしても無理で。だからお願いします。一度でいいんで、セミナーが終わったら僕とデートしてくれませんか? それでキッパリと諦めますから。お願いしますッ!」
「え、ちょっと、何やってんのよ。いくら頭下げられてもそんなの聞けないし。こんな時にそんなこと言われても……」
「お願いしますッ!」
嫌な予感が的中したことにも驚いたが、こんな時にそんなことを言ってしまえる羽田の神経は一体どうなっているのだろうか。
こんな時に告白なんかされてもちっとも嬉しくないどころか、不愉快極まりない。
困惑状態ながらも放った私の声など聞こえていないとでも言うように、羽田は頑なに頭を下げ続けている。
おそらく、私が了承するまでテコでも動かないつもりなのだろう。
ーーもう、ちょっと勘弁してよ。
一向に動こうとしない羽田を前に呆れ果てて、もう怒る気も起こらない私が途方に暮れてかけていると、不意に窪塚の姿が脳裏に浮かんでくる。
ーーこういうとき、窪塚がいてくれたらなぁ。
なんて、もはや神頼み的な考えしか浮かんできちゃくれない私の耳には、いつぞやのように、足早にこちらに向かってずかずかと歩みを進めてくる誰かの靴音が届くのだった。