エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
慌てて窪塚を見やるとメチャメチャ怖い顔をしている。
こんなに怒った窪塚を見るのは初めてかもしれない。
確かに、しらばっくれてばかりのくそワンコにはめっちゃ腹立つけど、まさか、殴ったりしないよね?
とは思いながらも、くそワンコの態度がカンにでも障ったのか、本気で怒っているらしい窪塚のあまりの気迫に圧倒されて、私は、その場に立ち尽くしたまま動くことができずにいる。
内心オロオロしていると、窪塚が羽田の胸ぐらを引っ掴んで自分のほうに引き寄せざまに。
「おいっ! 聞こえなかったのか? 目障りだからとっとと失せろつってんだよッ! それとも、殴られたいのか? おい、どうなんだ?」
「……め、滅相もないです。いろいろとすみませんでしたッ」
心底、忌々しげに吐き捨てた窪塚の言葉に、ようやく羽田が謝罪すると、もう用は済んだとばかりに、ポイッとゴミでも捨てるようして掴んでいた胸ぐらから手を離した窪塚。
すると唐突に解放されたことにより羽田がふらふらと覚束ない足取りで、自分の車に背を預けるようにぶつかり苦悶の声をあげ、甘い顔には悲痛な色を浮かべている。
窪塚はそれらを尻目に、さっきのものとは似ても似つかない優しい声音をかけてくれた。
「そんなとこでぼうっと突っ立てねーで行くぞ、ほら」
その声に、突っ立ったままだった私がコクンと頷いたのを見届けてから、私の手を素早く手に取り。
しっかりと繋ぎあってから、スタスタと歩き始めた窪塚によって連れてこられたのは、約一月ぶりに乗ることになった、窪塚の所有する車の助手席だった。