エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
窪塚にされるがままで手を繋ぎ合っていたため、車に乗り込む間際、窪塚の変わり身の早さについていけず未だにポーッとしてしまってた私は、徹夜明けで微かに疲れの色が滲む窪塚と間近で視線を交わすこととなったのだが。
その際に、窪塚の切れ長の双眸が一瞬僅かに見開かれた。
ーーもしかして、メイクがくずれちゃってるとか?
至近距離よりもメイクの心配をしていると、ハッとしたような表情を覗かせた窪塚に、おかしそうに笑ったあとで、いつものように揶揄われてしまうことになり。
「ハハッ。何ぼーっとしてんだよ。もしかして、カッコよく登場してワンコ追い払った俺に惚れて、見惚れてんのか?」
一瞬、心の中を読まれてしまったのかと動揺してしまい、私の鼓動がドキンッと大きく跳ね上がった。
お陰で、額には冷や汗まで滲んで、心拍数も爆上がりだ。
けれども、メイクが気にかかったことで、すぐに正気を取り戻し、『これはただいつものように揶揄われているだけだ』ということに気づくことができ、なんとかいつものような返しができたのだった。
「……だ、誰がアンタになんかに。バッカじゃないのッ! フンッ」
少々動揺したものの、いつものように対応できたことに安堵してシートベルトに手を伸ばした私の耳には、ドアを閉める少し前、窪塚が力なく笑ってから零した呟き声が流れ込んできて。
「ハハッ。だよなぁ」
ーーほらね。やっぱり揶揄われただけじゃない。もー吃驚させないでよ!
ようやくホッと胸をなで下ろすことができたのだった。