エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 そうして、運転席の方に回った窪塚が車に乗り込んでエンジンをかけてすぐのことだ。

「……お前さぁ、なんか今日、えらくめかし込んでないか?」

 窪塚にしては珍しく、言い出しにくそうにではあったものの、そう言って訊ねられてしまい。

 まさか、窪塚のために頑張ったおしゃれやメイクのことで、窪塚本人から何かを言われるなんて思ってもみなかったために、私のテンションはたちまち爆上がりだ。

 ーー気づいてくれたんだ。どうしよう。メチャクチャ嬉しい!

 とはいえ、素直に喜んだりしたら、窪塚のことを好きになっちゃってることに勘づかれてしまうので、ここはぐっと気持ちを抑え込もうとしていたところへ、窪塚から再び声が届くも。

「……大学病院に行くんだもんな。藤堂に会うかもしれないってことか。なるほどな」
「……」

 私の思惑とはまったく違ったものが窪塚の口から出てきたもんだから、本来ならば窪塚への想いに勘づかれずに済んだと喜ぶべきところだが、さっき爆上がりしたばかりのテンションは急降下。

 羽田のことでお礼を言う機会を逃しただけでなく、窪塚の言葉に否定も肯定もできずに、私はただただ黙って、車窓の外に視線を固定したままやり過ごすことしかできずにいた。
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