エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
「……んんっ」
突如、くぐもった声を微かに漏らした窪塚が僅かに顔を顰めて身動ぎすると同時に、うっすらと目を開け、不思議そうにパチパチと何度か瞬いてから、ぼーっと覚束ない寝ぼけ眼で私のことを見上げてきて。
「……あー、そっか。俺、寝落ちしてたのか。わりぃ」
ほんの数秒足らずで状況を把握したらしい窪塚がそう言ってくるなり、そのまま起き上がろうとしている。
医者という職業柄、睡眠不足なんて日常茶飯事で、短時間の仮眠でもすぐに動いたり、瞬時に頭を覚醒させる必要がある。
それらは常日頃から自ずと身についてしまった、いうなればスキルのようなものだ。
今日ほどそのことを恨めしいと思ったことはないかもしれない。
ーーあともう少しだけでいいからこうしていたい。
そんな想いに突き動かされてしまった私の手と口は無意識のうちに勝手に動いていて。
「眠いんでしょ? だったらもう少しこのままでいなさいよ」
今まさに起き上がろうとしている窪塚の肩をぐっと手で押しとどめるようにして引き留めてしまっていた。
まさか私がそんな行動に出るなんて夢にも思っていなかったのだろう窪塚は、虚を突かれたように瞠目したまま固まってしまっている。
ーーど、どうしよう。
勢いで引き留めちゃったけど、この後、どう言って取り繕えばいいのか、皆目見当がつかない。
このままでは窪塚のことを好きなことがバレてしまうんじゃないのかな。
そう案じて、焦れば焦るほどに、考えがまとまらないどころか、私の頭は混乱するばかりだ。