エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 ーーズルイ! そんなこと、こんなタイミングで言ってくるなんて。本当にズルイ。

 こんなのお世辞だって、そんなこと分かりきってるのに。

 それでも、好きな人に言われると、やっぱり、嬉しいものは嬉しい。

 窪塚が優しく触れたところから、なにかあったかいものがじわじわと際限なく溢れてきて、私の身も心も満たしていく。

 さっきまであんなに落ち込んで、半べそまでかいて、泣きそうになってたクセに。

 もう心は上向いてすっかり立ち直ってしまっている。

 けれども、窪塚の放った、『勘違い』という言葉に引っかかりを覚えてしまった私が、

「ねぇ、窪塚。勘違いってどういう意味よ?」

背後の窪塚の方に振り向きざまに問いかけてみると。

「……あっ、あー、お前が俺に惚れてんじゃないかって勘違いて、吃驚しただけだから気にするな」

 いつもの揶揄い口調ではあったものの、ズバリと核心を突かれて、内心ヒヤヒヤしつつも、バレるわけにもいかないので。

 振り返っていた顔を窪塚から車窓に戻して、窪塚から顔が見えないのをいいことに。

「はっ!? バッカじゃないの? 自意識過もいいとこ。そんなわけあるわけないでしょーがッ!」

 何食わぬ顔でしれしれっといつものようにツンとした強い口調で、心とは裏腹な言葉を放った私に、窪塚は、やっぱり楽しげに笑いながら揶揄うような口ぶりでドキリとするような返事を返してきた。

「ハハッ。だから、俺の勘違いだって言ってんじゃん。けど、前ほど嫌いじゃないんだろう?」
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