エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 なんとか言い終えて、そのまま帰ってしまおうと、助手席側のドアを開けようとした私の反対側の腕は、

「おい、待てよ。どうしたんだよ? 急に。いい逃げするなんてお前らしくないだろ?」

そう言ってきた窪塚によって手首を掴むことで制されてしまい。

 ーー私らしくないって、どういう意味よ? 

 誰のお陰でこんな風になってると思ってんのよッ!

 大体、アンタが画像なんかで脅したりするからこんなことになってんでしょうが!

 いつもの如く、胸の内では、そんな威勢のいいことを言ってるクセに、実際には言葉なんて何も出てこない。

 また、そんな自分に対しても、腹が立って腹が立ってどうしようもない。

 ーーもう、いっそのこと、何もかも全部、このままぶちまけてしまおうか。

 そんな半ばヤケクソ気味な考えが浮上しかけた時のことだ。

 いつからそこに立っていたのか、私が今まさに開け放とうと手をかけていた、助手席のドアのガラス一枚隔てた向こう側に、久しぶりに目にした父親の姿を捉えてしまったために、驚きのあまり、私は瞠目したままフリーズしてしまっていた。
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