エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
きっと時間にすれば、数秒か数十秒ほどの僅かな時間が途轍もなく長く感じられたが、お陰で諦めがついた。
観念した私は、依然心配そうに私の様子を気遣わしげに窺ってくる窪塚に、ようやく返事を返すこともできて。
「……あっ、うん。全然大丈夫。そこに両親がいるけど気にしなくていいから。なんかごめんね。じゃあ」
そのまま車から降車しようと思っていたのだけれど。
言い終えた刹那、どういう訳だか掴まれたままだった手首を尚も窪塚にぐいっと強い力で引き寄せられ、怖いくらいに真剣な面持ちを携えた窪塚から、
「おい、ちょっと待てよ。彼女の両親に一緒にいるとこ目撃されて、それをシカトして逃げ帰る彼氏がどこの世界にいんだよ? んなことできる訳ねーだろ?」
さも当然のことのように、表向きでしかない彼氏のクセに、もっともらしいことを言われてしまい。
一瞬、納得してしまいそうになったが、寸前で、『いいや』と思い直して、早口でまくし立てるも。
「否、だって、私たちはただのセフレでしかないんだから、挨拶なんてする必要ないでしょうが」