エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
いきなり両親と遭遇し、窪塚にとったら、さぞかし面倒なことに巻き込まれたと、煩わしく思われているだろうと思っていたのに。
意外にも、男らしい窪塚の提案により、今こうして両親の眼前で、とりあえず謝らないことには話を聞いてもらえないだろうということで。
「この度は私の配慮が足りず、鈴さんのご両親には多大なご心配をおかけしてしまい、誠に申し訳ございませんでした」
神妙な面持ちで謝罪してくれている窪塚と、こうして仲良く並んで、深々と頭を下げているなんて、なんだか夢のようだ。
ーーなんか、本物の恋人同士みたい。夢ならこのまま醒めないで欲しいなぁ。
相も変わらず、非常事態であるというのに、窪塚の隣で頭を下げつつ、不謹慎にも、未だキュンキュンと胸をときめかせてしまっている私の元に、現実を突きつけるようにして、普段は穏やかで優しいはずの父の、これまで一度も耳にしたことがないような、淡々とした冷ややかな声音が轟いた。
「どこの馬の骨とも分からない方に、謝罪されるような謂れはございませんので、どうぞお引き取りください」
そうして私ではなく窪塚に対して、問答無用で突き放すようにしてピシャリと放たれた拒絶の言葉と、端から聞く耳を持とうとしない父の頑なな態度に。
父の怒りが相当なものであることが窺える。
こんなに怒った父を見るのは初めてで、どうしたものかと思案してみても、気が急くばかりだ。