エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
こんな状況で、妙案など浮かぶわけもなく。
これ以上父のことを怒らせないためにも、私は頭を下げたまま押し黙っていることしかできないでいる。
そこへ今度は、父の傍にいる母の声が割って入ってきた。
どう考えても、無断外泊をした私に非があるのは明白で、当然、母は父に加勢するものだと思っていたのだが。
「ちょっと、隼。何もそんな言い方しなくても。鈴ももういい大人なんだし。兎に角ちゃんと話だけでも聞いてあげましょうよ?」
どうやら、極度の心配性の父とは違いない、こういうことにも理解のあるらしい母は、父のことを宥めようとしてくれているようだ。
ーー父は母には弱いから、これで少しは怒りも鎮まってくれるはず。
そんな期待を込めて、両親の様子を静かに窺っていたのだけれど。
「いくつになっても、僕たちの可愛い子供であることには変わりないよ。それに、鈴は女の子なんだ。間違いがあってからじゃ取り返しがつかないだろう?」
私の期待も虚しく、頼みの綱だった母の言葉にも、頑として耳を貸そうともしない父に向けて。
母は至極呆れたように、これみよがしに、ふうと大きな溜息をついてから、ここぞという時に見せる、ツンと澄ました表情を浮かべると、これまたツンとした声を放った。