エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
けれど、不安に押し潰されそうだったさっきまでとは違って、窪塚のお陰で、いつもの調子を保つことのできている私からすると。
確かに無断外泊はいけなかったとは思うけど。私だってもうすぐ二十七歳になるいい大人なんだし。
ーーそこまで怒らなくてもいいんじゃないの? とも思うわけで。
否、だからって、ここで事を荒立てるつもりはない。
そんなことになったら、窪塚にますます迷惑がかかってしまう。
そうなれば、もう二度と会ってくれないかもしれないし。
ーーはてさてどうしたものか。
そうやって考えに耽っていると、再び父の声が私の元に届いた。
「もしかして、パパとママにはいえなことでもあるのかい?」
私がすぐに答えなかったせいで、どんどん悪い方へと傾いていく父の言葉に内心ではドキリとしつつも、少しくらい信じてくれてもいいのにとも思う。
危うくカチンときそうになったけれども、これ以上怒らせないためにも。
ーー平常心、平常心。
心の内でそう唱え、なんとか父への反発心を抑え込むことに成功し。
たった今、セミナーの帰りに医大の同期であり同僚でもある窪塚と一緒に過ごしているうち、徹夜だった窪塚と日頃の疲れから一緒に寝落ちしてしまい、気づけば朝だったと。
全部嘘だと見破られてしまうと思い、恋人だとかそういうことに関しては敢えて口にはせずに、事実を織り交ぜながら説明したところ。
やんわりと、けれども的確にズバッと、父に切り込まれてしまうのだった。
「日頃の疲れと徹夜明けだったことで、部屋で話しているうちに二人して寝落ちして、気づいたら朝になっていたなんて。ただの同期にしては随分と仲が良さそうだけど。本当にそれだけの関係なのかな?」