エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。
この出来事は、樹先生のお陰で、ようやく高梨に自分の気持ちを伝えるという覚悟を決めた俺にとっては、これ以上にはないというくらい、途轍もなくショックなものだった。
でも、もうここまできたら、後戻りなんかできるはずがない。
どうせ元から俺は高梨には嫌われていたんだ。
いくら三年前のわだかまりが解けたからって、画像で脅してセフレを強要した事実だって消えるわけでもない。
たとえ、当たって砕けたからって、どうってことない。
むしろ、全部本当のことを話してスッキリして、高梨にこっぴどくフラれてしまえば、綺麗さっぱり諦めもつくだろう。
否、高梨のためにも、早くセフレなんていう、この不埒な関係なんて解消して、キッパリ諦めなきゃいけない。
本当に高梨のことを想っているなら、高梨がちゃんと藤堂の元にいけるようにしてやるべきだ。
この長い長い不毛な片想いに、今度こそ終止符を打って、前に進まなきゃいけないーー高梨のためにも、自分自身のためにも。
この夜俺は、ずっとずっと先送りにして逃げてきたものの何もかもに、しっかりと向き合う覚悟を今度こそ決めたのだった。
こうして迎えた『日本脳神経外科学会・関東東京部会合同研究発表会』の当日、脳外科の部長である日村先生と樹先生、そして今後のためにと専攻医である加納ら他数名の同僚医師とともに、俺は会場であり出身医大でもある帝都医大へと赴いている。
そこには勿論、脳外科医として勤めている藤堂もいて、学会の名誉会員である親父も招かれていた。
中盤に行われた樹先生の『もやもや病への様々なアプローチにおける研究結果と今後の可能性について』のスピーチも無事に終えることもでき、たった今、閉会の挨拶も聞き終えたところだ。