エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 日村先生と樹先生が学会の会員らと談笑しているのを尻目に、俺は少し離れたところにいる藤堂のことを窺い見ていた。

 今日は学会の発表会とあって、皆一様に華美でないスーツに身を包んでいる。

 それなのに、さっきから、その中の藤堂の姿がやけに目についてしまい、見たくもないのに視界に割り込んでくるのだ。

 藤堂は百八十センチちょうどの俺に比べると少し低めの身長だが、小顔でスタイルもよく、男にしては甘めの中性的な顔つきをしていて、医大の頃から非常にモテていた。

 その上、明るい性格で人当たりもよく、面倒見もいいとくれば当然だろう。

 高梨が好きになるのも頷けるし、お似合いだとも思う。

 覚悟は決めたものの、それは玉砕することへの覚悟だったために、俺はすっかり意気消沈していた。

 ボンヤリと藤堂のことを眺めていると、俺の視線に気づいたらしい藤堂と目が合い、逸らすのも不自然だと思い、軽く手を上げやり過ごそうとしていたのだが。

「なんだよ、窪塚。久しぶりなのに声ぐらいかけてくれよ。水くさいなぁ」
「……あっ、あぁ、悪い」
「悪いと思うならさぁ、この後付き合ってくれないか? 同じ脳外科医として色々と情報交換もしておきたいし」

 医大の頃と変わらない人懐っこいにこやかな笑顔を携えて歩み寄ってきた藤堂の言葉により、近頃不運続きで、幸運の女神に完全に愛想を尽かされてしまっているらしい俺は、何の因果か、こじゃれたバーのカウンターで恋敵(でいいのか? 否、藤堂にとったら恋敵にもならないかもしれない)と一緒に酒を酌み交わす羽目になってしまっている。
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