エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 とうとう堪忍袋の緒がブチッと切れてしまった俺は、

「あー。そんなもんどーってことねーよ? 訴えるなり何なり好きにしろ。けどな、高梨には二度と近づくなッ!」

藤堂の言葉に売り言葉に買い言葉で即座に切り返し、高梨のことに関してもきっちりと釘を差してから、なんの躊躇もなく右腕を思いっきり振り上げて今まさに振り下ろそうとしかけた刹那。

「へ〜。高梨のことがそんなに大事なのかぁ。高梨のためなら何でも捨てられんだぁ。へ〜、そーなんだ〜」

やっぱりヘラヘラとしている藤堂が表情同様のヘラヘラとした口調でそんなふざけたことを抜かしてきて。

 もう我慢ならないと今一度大きく振り上げた腕を藤堂の顔面めがけて放ったそのタイミングで、ヘラヘラとした表情から真顔に取って代わった藤堂の手により俺の手首はすんでのところで掴まれていた。

「そんなに大事だったら、高梨のこと泣かせたりすんじゃねーよッ! 」

 そうしてこの急展開と藤堂から食らった言葉が意外すぎたことで、躊躇しつつも、頭がついていかない俺が呆けている間に。

 さっきの俺のように鬼の形相で眼前まで迫り凄んできた藤堂によって、続けざまに放たれた次の言葉によって。

「てか、お前らどーなってんだよ? 念願叶ってやっとくっついたんじゃねーのかよ? やっとくっついてそのままゴールインかって思ってたのに。高梨は浮かない顔してて、理由訊いてもなんも言わねークセに、今にも泣きそーな感じでさぁ。あんなの見せられたら、放っておけるわけねーじゃんッ!」

 これまでの藤堂の言動のあれこれがどうやら演技だったこと。そして、高梨に対しての俺の気持ちがどれほどのものかを確かめるためのものだったらしいことを、今更ながらに気付かされることとなった。

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