エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 窪塚は、私の言葉を耳にするなり、私の身体を抱きしめている腕に尚もギュギュッと力を込めて、腕の中に掻き抱くようにして閉じ込めると。

「ああ。わかってる。でないと、お前が可愛いことばっか言ってくるから、このままだともっとヤバいしな」

 なにやら感慨深げに、どこか苦しげに、声を喉から絞り出すようにして、予想外な言葉を返してきた。

 確かに、『私もメチャクチャ嬉しい』とは言ったけれど、そこまで可愛いことでも、感動することでもないと思うのに、窪塚にとっては、ヤバい言葉であったらしい。

 なんて冷静に分析しちゃってるけど、窪塚にそんな風に言われてしまった私だって、内心ではメチャクチャ歓喜してしまっていて。

 だから、口では、

「何それ、意味わかんない」

とかやっぱり可愛げのないことを言ってはしまっていたけれど、それからしばらくの間は、しおらしく、窪塚にされるがままでいた。

 そんな嬉しいハプニングの後で、ようやく私の身体を腕から解放しかけた窪塚に向けて、今度は、私の方が待ったをかける番となって。

「ねえ? 窪塚。このままのほうが落ち着くから、このままで聞きたい。このままじゃダメかな?」

 離れていこうとする窪塚のスエットの袖口をぐっと摘まんで、窪塚のことを下から首を僅かに傾げつつ窺うようにして問い返してみたところ。

「バーカ。ダメなわけねーだろ。俺もこのままがいい」

 これまで一度も耳にしたことがなかったくらいの、優しい甘やかな響きのある『バーカ』と一緒に、とびきり嬉しい言葉をもらった私は幸せな心地の中で、あの夜のあれこれを聞くことになったのだが……。

 こうしていることで、どんなに恥ずかしいことを聞かされても、窪塚の胸に顔を埋めていることで、窪塚には顔を見られずに済むというメリットがあるということに、私は嫌というほど身をもって思い知る羽目になるのだった。

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