エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 そのせいもあって。

『ねぇ、窪塚? 私に話してみなさいよ? そしたら少しは気が晴れるかも知れないし。少しは元気になれるかもよ? ねっ? いい考えでしょ?』

 私は窪塚に対して、そんな提案を持ちかけていたらしい。

 それによって、窪塚は致し方なく、ちょうど翌日に控えていたお兄さんと結婚する小学生の頃の同級生であり隣に住んでいる幼馴染みに、私のことを当てはめて話して聞かせたのだという。

 そうして、話してるうちに……。

『へ~。そうだったんだぁ。すっごく意外。窪塚も人並みに失恋なんかするんだぁ。へ~』

 おそらく酔っ払った私が何気なく放ったのであろうこの言葉に、男としてどころか、人並みにさえも扱ってくれないのかと窪塚は憤ってしまったのだという。

 どうにも黙っていられなくなってしまった窪塚が我を見失い放った次の言葉によって。

『……なんだよ。俺は失恋もしちゃいけないのか? 俺だって、人並みに誰かを可愛いと思うことだってあるし。誰かを好きになることだってあるっつーの。それを何だよ、さっきから人並みに人並みにって、俺のこと馬鹿にでもしてんのか? ……あっ、いや、悪い。全部話したんだから、もう、いいだろ? 気持ち悪くないんなら、もー帰ろうぜ』

 窪塚に少々言い過ぎてしまったと思ったらしい私がシュンとして謝ってきて。

『怒らせちゃって、ごめん。でも別に、悪い意味じゃなくて。仕事も何もかも完璧に熟しちゃうアンタが失恋したっていうから、吃驚しちゃって。それに、アンタっていっつもポーカーフェイスだし。誰かに弱音とか吐けないのかなーって思ったら、放っておけないっていうか。気になっちゃったっていうかさぁ。でも、そうだよね? 誰でも踏み込んで欲しくないことってあるもんね。なのにごめんね? 私ってばダメだなぁ。こんなんだから誰にも女扱いされないんだろうなぁ。なのにビッチなんていわれて、笑っちゃうよねぇ』

 終いには、自嘲気味に微笑んだ私が今にも泣き出してしまいそうな表情を浮かべていたことで、窪塚は無意識のうちに私のことを胸に抱き寄せ、腕に閉じ込めてしまったらしい。

 そして咄嗟に、ビッチなんて言わせたくないと思ってしまい、『言わせない』そう口にしてしまったらしいのだ。
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