エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 それに対して父は、一瞬だけ険しい表情を覗かせると、抑揚のない冷ややかな声音を響かせた。

「この前の約束を取り消して欲しい。その上、結婚前提の交際を許して欲しいなんて。またずいぶんと厚かましいお願いだねぇ? そんなこと許せるわけないじゃないか。大体、鈴に近づかないなんて言っておいて。その約束さえ守れないんじゃ、話にならないよ」

 母に対しての態度とはまったく違った、この前と同様の、とりつく島もないといったご様子だ。

 これにはさすがに黙っていられないと、カチンときてしまった私と、正面の母とが父に詰め寄ろうとした刹那。

「勿論、すぐにお許し頂けるなんてこと、思っておりません。お許し頂けるまで、何十回でも何百回でも、いいえ、何万回でも、こうして何度でもお願いにあがるつもりでいます」

 正面の両親に向けて、深々と頭を下げてくれている窪塚の隣で、なんとか怒りを抑え込み、極力冷静に真摯な態度を心がけ、私も窪塚に倣うようにして深々と頭を下げて援護射撃を繰り出した。

「私、結婚するなら、窪塚しか考えられない。優君のことは吃驚したけど。窪塚が傍にいてくれたら平気だから。それから、窪塚に説得されちゃったから、家に帰ろうと思ってるけど、こんなんじゃヤダ。大好きなパパに一番に祝福して欲しい。だから、窪塚とのこと認めてください。お願いします」

 父になんとか許してもらおうと、あらかじめ練っていた策だったはずが、いつしか私は涙ながらに嘘偽りない想いを言葉として紡ぎ出していて。
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