エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

「そういえば、なんで仮眠室が防音になってるか知ってたか?」

「……は? そんなの、仮眠とるために決まってんでしょうが」

「まぁ、当然それもある。けど、院長曰く、昼夜関係なく病院で拘束されてる医者、特に夫婦揃って医者の場合、コミュニケーションとるのも大変らしくてさ。それで、他の職員に気兼ねなく夫婦のコミュニケーションをはかるためにって、防音にしてるらしいぞ」

「……」

 開いた口が塞がらないというのは、きっとこのことをいうのだろう。

 今日は色々ありすぎて、もう何度目かも分からないが、心底呆れ果ててしまった。

 ーー夫婦のコミュニケーションをとるためにって……。あのクソじじい、一体何を考えてんの? 信じらんない。

 胸中で、私のことを見捨てた薄情なおじさんに対して盛大な悪態をついていると、不意に、院長であるおじさんの奥さんであり副院長でもある小百合先生の顔が脳裏に過り。

 否、でも、若い頃から、窪塚の父親と同じように、小百合先生は腕のいい心臓血管外科医として有名だったようだから、結構切実な問題だったのかも……。

 窪塚が妙な言い方するからいかがわしいことに結びつけちゃったけど。

 おそらく……否絶対に、いかがわしい意味じゃなくて、純粋に会話を交わすとかのコミュニケーションのことを言っていたに違いない。そりゃそうでしょうよ。

 いくらちょい悪系のイケオジなんてふざけたこと言ってても、一応、ここの院長なんだから、そうであってほしい。

 因みに、小百合先生は、私が医者を志すようになったきっかけになった人だ。

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