エリート外科医の不埒な純愛ラプソディ。

 それなのに、窪塚ときたら、まったく気にもとめない素振りで。

「ついさっきイったばっかでそんなにカッカしてると脳の血管裂けるぞ。まぁ、俺にオペしてもらいたいってんなら別だけどな」

 胸に抱き寄せている私の頭頂部にわざとらしく、チュッというリップ音と共にキスを降らせてきた。

 ますます腹が立ってきて、強い口調を浴びせつつ。

「誰があんたなんかにオペなんか頼むもんですか。死んでもご免よッ!」

 窪塚の胸を両手で押しやりながら突き放そうにも、びくともしないどころか、ますます強い力で抱き込まれて身じろぎさえも叶わない有様だ。

 オマケに、窪塚のアレがちょうど太腿のあたりにピッタリとくっついているせいで、動こうとするたび、強請るように、自分から擦り寄ってでもいるような格好となっているので、なおさら動けない。

 けれど、ここで引き下がったら、窪塚にこれからもずっといいようにされてしまうのがオチだ。

 ーー何が何でも阻止してやる。

 そのつもりが……。

「ハハッ。ずいぶんな嫌われようだな。けど、俺だって誰でも良かった訳じゃねーよ。お前だから言ってるんだ」

 相も変わらず愉し気に軽く笑ってから、嘯くように窪塚が放った言葉が、これまた予想に反したモノだったために、今まさに臨戦態勢で身構えていた私は唖然とさせられることになった。

 ーーど、どういうこと? 

 もしかして、私のことが好きとかじゃないわよね。つい最近失恋したばかりなんだし。

 だったらどういう意味? まったくもって意味が分からないんですけど。
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