堂くん、言わないで。
「……たしかに顔色悪そーだけど」
「え、そうなの?」
「そうなのって、お前が気分悪いって言ったんだろ」
「う、うん」
話を合わせるため、とりあえずうなずいておいた。
さっきのこと。
べつに見られたら見られたで、説明してくれるんだと思う。
だって堂くん、ぜんぜん後を引いている感じがない。
さっきまであんなに怖い顔をしてたのに。
いまはもう、いつもの気怠げモード。
わたしがいたから無理に切り替えたというわけでもなさそう。
もしかしたら慣れているのかもしれない。
さっきみたいなことは。
「立てる?」
「へ」
堂くんの声に、はっと我に返る。
気づいたら彼は、わたしの荷物を持ってくれていた。
「だ、大丈夫!────っ、とぁ」
急に立ちあがろうとしたら、さすがにくらりときてしまった。
頭に血が回っていないかのように立ちくらんだ。
視界がしろく、ちかちかしている。
堂くんが支えてくれないと、きっと前に倒れていたと思う。