堂くん、言わないで。
「あ、ありがとう」
「お前ひとり?」
「うん」
すぐにちかちかは収まって、視界も正常になった。
だけど離れるタイミングを見失ってしまい。
わたしは堂くんの胸に寄っかかったまま。
背中にそっと回された腕には適度な筋肉がついていて。思わずびくりと身体を揺らした。
自然と密着するような格好になってしまった……!
今更ながらどうしようもなく鼓動が騒ぎはじめる。
「ここどこだかわかってんの」
「歓楽街……の、危ないとこ」
どきどきしながら顔をあげて答えると、
わかってるなら、というふうに目が細められる。
わたしを咎めるような、そんな瞳だった。
ほっぺに触れるか触れないかの距離にある堂くんの指先がもどかしい。
輪郭をなぞるように降りていく指先はやっぱり冷たさを帯びているのだろうか。