交際期間0時間の花嫁 ――気がつけば、敏腕御曹司の腕の中――
(何で? どうして? 無理! ありえない!)

 心の中でいくら叫んでも無駄だった。
 これ以上ないくらい動揺しているのに、私は長瀬さんのキスを拒めない。その腕から逃げ出すこともできないまま、廊下を運ばれていった。

 優しい、それでいて次第に情熱的になっていく触れ合いが、どうしようもなく心地よかったのだ。

「あっ!」

 ふいに、長い指がブラウスのボタンに伸びてきた。反射的にその手をつかむと、優しく引き剥がされる。

「な、長瀬さんはもうシャワーを浴びたじゃないですか!」

 恥ずかし過ぎて抗議すると、「そうだね」と頷かれた。

「だけど、もう一度浴びたくなった……みずほと一緒に」

 信じられないくらい甘い囁き。
 答えられずに固まっていると、再び唇を奪われてしまう。そのままボタンやホックを外されて――、

(……うそぉ)

 気がついた時には、私たちは浴室にいた。生まれたままの姿でシャワーを浴びていたのだ。

 長瀬さんは着やせするタイプだと思っていたけど、実際にその身体を目にして、ため息が零れた。
 きれいについた筋肉、クッキリ割れた腹筋、そしてとてもまともに見ることはできないけれど……下腹部で息づいている彼の欲望。

 怖いし、恥ずかしいし、熱いシャワーでのぼせそうだし、もうどうしていいかわからない。
 それでも、ここまで追い込まれてしまっては、もう先に進むしかなかった。
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